「季節の歌」百人一首


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 「季節の歌」百人一首 (後編)

「百人一首」には、素敵な四季の歌がたくさんあります。日本のように四季があると、折々の自然にふれて、私たちは新たな感動をおぼえることでしょう。是非、言葉に出して読んでください。韻文はリズムを楽しむものです。
目で読んだだけの時には味わえなかったイメージが広がってきます。ごゆっくりご覧下さい。

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ももしきや 古き軒端の  しのぶにも
 なほあまりある 昔なりけり
順徳院
この古い宮中の軒先に伸びた忍び草を見ていると、朝廷の栄えた昔が思いおこされる。いくらしのんでも忍びきれないほどに・・・
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは
 みそぎぞ夏の  しるしなりける
従二位家隆師
楢〔なら〕の葉にそよそよと秋を感じさせる風がなびいている。でもならの小川では六月祓〔夏越しの祓い〕の行事が行われている。夏の終わりなのだなあ・・
おほけなく 憂き世の民に おほふかな
 わがたつ疎間に杣に 墨染の袖     
前大僧正慈円
身のほど知らずと言われるかもしれないが、仏につかえる者として、苦しむ民をこの墨染めの衣の袖でおおい、災いから守りたい
世の中は 常にもがもな  渚こぐ
 あまの小舟の 綱手かなしも    
鎌倉右大臣
渚をこいでいく漁師の小舟が綱で引かれてゆくようすはなんとのどかな景色だろう・・。この世の中はいつまでもこのように平和であって欲しいものだ。
ながらへば またこのごろや しのばれむ
 憂しと見し世ぞ 今は恋しき    
藤原清輔朝臣
つらい事の多い毎日だが、いつの日か今の事が懐かしく思い出すのだろうか・・かつては辛いと思ったあの日々が、今は懐かしく思われるのだからなあ・・
世の中よ 道こそなけれ 思ひいる
 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる    
皇太后宮大夫俊成
世の中のつらいことから逃れようと、この山奥にやってきたが、ここでも鹿が悲しげにないている。生きている限り、辛いことから逃れることはできなのか・・・
滝の音は 絶えて久しく りぬれど
 名こそ流れて なほ聞こえけれ    
大納言公任
昔はみごとだと言われたこの滝だが、今は流れが絶えて久しい。しかし、そな名高い評判だけは、流れ伝わっている。おお滝の音が聞こえてくるようだ・・。

たれをかも 知る人にせむ  高砂の
 松も昔の  友ならなくに    
藤原興風
長い年月の間に、だれも亡くなっていった。年老いた私は、誰を友とすればよいのだろう・・。生きながらえているのは、あの高砂の松くらいだが、それでさえも昔からの友ではないのだからな・・。
立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる
 まつとし聞かば 今帰り来む     
中納言行平
今はこうしていなばの国に発ちますが、いなばの山の峰に生えている松のように、皆さんが私を「まつ」と聞いたならば、すぐにでも帰ってきましょう。
これやこの 行くも帰るも  わかれては
 知るも知らぬも 逢坂の関    
蝉丸
ここが山城の国と近江の国の境となる、逢坂の関とよばれる関所だ。なるほど前から知っている人も、しらない人も別れてはまたここで逢えるのだな・・
わが庵は 都のたつみ   しかぞすむ
 世をうぢ山と  人はいふなり    
喜撰法師
私の庵は都の東南にある。シカも住むほどの静かな場所だ。ここで私は心やすらかに毎日を暮らしている。でも世間の人々は、私が世を捨てて宇治山に隠れ住んでいるとうわさをしている・・
天の原 ふりさけ見れば   春日なる
 三笠の山に  出でし月かも    
阿倍仲麻呂
大空を見渡すと美しい月が出ている。私も唐にわたって30年・・今こうして眺める月も、昔、奈良の春日にある三笠の山に出ていた月と、同じなのだな・・
夏の夜は まだ宵ながら   明けぬるを
 雲のいづこに  月宿るらむ    
清原深養父
夏の夜は短くて、まだ宵のうちかと思っていたら、もう明けてしまった。これでは月はとても西の山に沈みきれないだろう。雲のどのあたりに隠れているのだろうか。
わたの原 こぎ出でて見れば   久方の
 雲居にまがふ  沖つ白波    
法性寺入道前関白太政大臣
広々とした海に舟を出して、見渡してみれば、遥かかなたに、雲かと間違えるばかりに、沖の白波が立っていて美しいな・・
春すぎて 夏来にけらし  白妙の
 衣ほすてふ  天の香具山    
持統天皇
天の香具山の緑がとても美しい!。いつのまにか夏がきてしまったらしい。山すそに真っ白な衣が干してある。緑の山に白い衣・・なんて美しい光景でしょう・・!
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで
 ふりゆくものは わが身なりけり    
入道前
みごとに咲いた桜の花が、春の嵐で雪が降るように散って行く。だが、年をとることも「ふる」という・・「ふる」のは桜ではなく私自信なのだな。
ほととぎす 鳴きつる方を  ながむれば
 ただ有明の  月ぞのこれる    
後徳大寺
ほととぎすが鳴いているので、その方向をみても、ほととぎすは姿がなく、ただ夜明けの空に有明の月が残っているばかりだ。
高砂の 尾の上の桜  さきにけり
 外山の霞  立たずもあらなむ    
権中納言匡房
おおっ。遠くに見える高い山の峰に桜が咲いている。せっかく咲いているのだから、どうかそこの山の霞よ、立たないでほしい・・
春の夜の 夢ばかりなる  手枕に
 かひなく立たむ  名こそ惜しけれ    
周防内侍
春の夜のはかない夢のように、意味もなくたわむれに、あなたの腕を枕にしたら、つまらないうわさが立ちます。それが私には口惜しくてたまりません。
もろともに あはれと思へ  山桜
 はなよりほかに 知る人もなし    
大僧正行尊
おおっ、こんな山奥に桜が・・誰も見るわけでもないのに、けなげに咲く山桜。一人寂しく山中で修行している私には、お前の気持がよくわかるよ。おまえも私の心がわかるのだろう。
いにしへの 奈良の都の 八重桜
 けふ九重に  にほひぬるかな    
伊勢大輔
その昔、奈良の都で咲いていた八重桜が..今日はこの平安の宮中でいちだんと美しくさきほこっています。
久方の 光のどけき  春の日に
 しづ心なく  花の散るらむ    
紀友則
うららかな日の光が降り注ぐ、この気持の良い春の日に、どうして桜の花は、落ち着いた心もなくそんなに散り急ぐのだろう・・
君がため 春の野に出でて  若菜つむ
 わが衣手に  雪は降りつつ    
光孝天皇
あなたにさしあげようと思って、春の野に出て若菜(春の七草)をつんでいると、わたしの着物の袖に、雪がしきりに降りかかることですよ。